教室でお料理を教えたり、世界の「食」を求めて旅をしたり、
また日常生活の中から役に立つアイデア、新しい発見、感激など、「食」に関するエッセイをお届けします。
先週末、イースト・ワシントンへ松茸狩りに誘われた。シェルフィッシュのスぺシャリストで、我が家でパーティーをするというと、フッレッシュなオイスターをその日の朝、オイスターベッドからとりたてをもってきてくれる、なんともありがたい友人、JONROWLEYが、先水曜日もフランスの料理界の大御所、テレビでもおなじみのJACQUES PEPIN氏の来シアトル歓迎ディナーパーティーで、彼の大の友人でもあった故JULIA CHILDをみんなで偲ぼうと彼女が大好きでもあったこのノース上ストの特産のオリンピアオイスターをトスするために100個も用意してくれていた。その彼は、海の
こともよく知っているが、山の幸をめざして、きのこ狩りにも詳しい。秋の茶懐石をすると言うと、前日には山に入って、 フレッシュなとれたての松茸をご持参くださる。その彼にかねてから松茸狩りに誘われていたのだが、急きょこの席で、
2日後に行く話がまとまった。じゃあ、私はすき焼きの用意をして、松茸狩りの後はお酒と松茸すき焼きといこう!と。 同行はジョンを筆頭に、シアトルの地元紙『Seattle
P.I.』のFOODコラム(毎水曜)の記者とフォトグラファー、 そして我が亭主も仕事をおっぽって行くというのだ。
あいにく、
変わりやすいノースウエストの天候で、朝からしょぼしょぼ雨が降っていて、あまりアウトドア派ではない亭主の機嫌は悪い。
雨が降ったら行きたくないとのたまうが、私は無視。早朝からすき焼きの具の用意をしている傍らで、主人得意の塩しゃけ入
りのおにぎりを作ってもらう。
まずは現地のカフェで集合。そこから数マイル、途中で2〜3度車を止めては、ありそうな山に少々入っていくが
見つからない。本命の場所はせせらぎも美しく、ちょっと東北の山に似てはいまいか。山の中へ分け入って、川を渡
らないといけないのだが、とても滑りやすい。数年前にもカナダのマウント・ウイスラーでのスキーで、膝の靭帯を
切ってしまってから要注意の私は、そろそろと先に渡った人たちの助けをかりながら、滑りやすい丸太をどうにか渡
りきった。『Fear Factor』の番組にも出られるんじゃないか!なんてつぶやきながら……。その後、記者が川を渡
ろうとした時、じゃぼん! なんと水に尻餅をついて、その上、足をひねらせてしまった。万事休すと思いきや、
フォトグラファーは仕事根性まるだしで、ここまで来たからには仕事優先と、大急ぎでカメラを取り出す。
一瞬、不思議な森の中の、まるでディズニーの映画の中のようなセッティング。ここにもかしこにも、あるある松茸が。
ありとあらゆるきのこが、とってもとってもいっぱいある。瞬く間に、フランスはプロバンスから買ってきた、これも
あちらでは、ひょっとしてトリュフ・ハントに使うのではないかと思われる、肩ひも付きの軽いバスケットが松茸でい
っぱいになった。お初に松茸がりに使うのにぴったりの道具立て。素敵、素敵と我ひとり悦に入っていた。もちろん
めざとく、そのバスケットに注目したのはジョン。次回、プロバンスで見つけたら、おみやげに買ってきてあげよう。
それにしても、なんてきのこの豊富なことか。あー、きのこソサエティーに入って、もう少しきのこのことが分
かったらな……。珊瑚のようなきのこ、ロブスター・マッシュルーム、これらはパイクプレース・マーケットで
時々見ているものだし、小さな小さな、まるで星をちりばめたようなのは「なめこ」じゃないのかな? きっと、
これらを全部ぶちこんだら、きのこ鍋ができる。それにきりたんぽなんて入れたら最高!
けが人を大急ぎで隣町のクリニックまで運んで、また引き返し、素晴らしい景色の川のそばのピクニック・エリアで、
松茸すき焼きをする準備をはじめた。雨あしがまだあって、寒さに震えながら場所を選び、道具や料理の材料を次々
取り出す。要するに家からすべて材料はあらかじめ切ったりしてきたので、あとはとれたて松茸をクリーンするだけ。
能登で特注の七輪も使いはじめだ。いつかヨットの上で焼き鳥をしてやろうともくろんでいたのだが、木の船なので
いっしょに燃えちゃったらやばいと思い、未だ出番がなかったのが、ここにきて焼き松茸用に木炭をいこす。金網は
京都の有次のこれも特注。河原から石を拾ってきて、高さを調節する。
松茸を割いて、焼きはじめる。なんてかぐわしい匂い! お醤油と京都の千鳥酢につけて食べる。そこで熱カン。
お酒はもちろん北海道の男山。数年前に社長の山崎ご一家に招待されて、そこの工場ではその日のでき立てを飲んだ。
その時、雲に乗っているかのような気分にさせられた素晴らしいお酒だ。まんがの『美味しんぼ』を読んで、男山は
にごり酒が有名と知り、社長一家がシアトルに来られる時は、それをねだって大失敗したことがあった(にごり酒は
なんと、アイスボックスにしっかり氷をつけて入れてこないとだめなのだ。旭川から羽田、成田に乗り継ぐ時に、
氷を入れ替えて、そんな労をしてお持ちくださったのだった)。そんなこととは露しらず、おみやげににごり酒1本、
お願いなんて言ってしまたのだった。その恩義 にこたえて、もっぱら男山を飲んでいる。その熱カンが山で冷えた
体に気持ちいい、ほっかほかしてきてなんとも幸せ。
次にすき焼き鍋を火にかける。炭火で火力は強い。でも私のすき焼き鍋は、東北は南部の厚い鍋で、
熱くなるまでに時間がかかる。いったん温まれば本当においしく炊ける。味見をしながら、グツグツ
炊けてくるのを待つ。野外で食べる食事は本当においしい。汐風に吹かれても、こういう山間でも、
人生、至極の時だなって感に入る。おにぎりに自家製の糠漬けとたくあんを添えて、みんな満腹。
デザートに用意していた日本向け輸出用の極上ぶどうは、食べる暇がなかった。
こんなすばらしい所に連れてきてくださった人に仁義があって、松茸狩りをした場所を友人にもお教えできないのが、
非常に残念。
来る道すがらも紅葉がきれいで溜め息がでたが、帰り道も、道の色とりどりに染まった木々に見送られ、
身も心もリフレッシュすることができた。また、このノースウエストの魅力が増大したように感じられた。
松茸を使ってどんな種類の料理ができるか? 今後の楽しい課題をもらった松茸狩りだった。
風雅なことが好きだった父に似て、こんなことがここノースウエストでできるなんて、なんて幸せなのでしょう。
関連記事:
2004年10月13日付けのシアトルの地元紙『SEATTLE POST-INTELLIGENCER』
Fantastic Forage: Wild matsutake mushrooms
Wednesday, October 13, 2004
http://seattlepi.nwsource.com/food/194860_mushroom13.html

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