杉山洋子料理工房
 


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FOOD TALK

教室でお料理を教えたり、世界の「食」を求めて旅をしたり、 また日常生活の中から役に立つアイデア、新しい発見、感激など、「食」に関するエッセイをお届けします。



在釜

photo 在釜と書いて『ざいふ』と読むそうな。
いつかの淡交タイムスに、座忘斎裏千家お家元が、京都の町中を歩いていると、今でも『在釜』と表に書かれた紙が貼ってあるなり、 旗がひらめいていることがあるそうな。実際、私は今までお目にかかったことがないが、なんとすばらしいことか。 この意味は『私どもでは釜をかけて、いつでもお茶をお点てできますよ』と言うことなのだそう。

輪島などへ行くと、駅からの通りにある漆器屋さんを覗いてみるだけで、抹茶の接待にあずかることが多い。

photo茶室をもたない私は、それでも所っちゅう、リビングに畳半畳、紺色の毛氈(といっても、それまがいのフェルトだが)をひいて、 お茶のコーナーを設け、バーナーで、にわか釜をかけては、お茶三昧に浸ったりする。

昨日、エベレットのキッチン&グルメストアーで、料理教室をしてきた。
冬の和食の献立を教えたのだが、休憩のあと、略盆点前を披露し、参加者に干菓子と抹茶をサーブしてきた。 ほとんどがアメリカ人で、Tea Ceremony は初めてだと言う人ばかりだったが、照明を少し落とし、 皆が集中し、テンションを感じる中、いい気分で簡単にお茶のことを説明し、おいしいお茶を点ててあげた。 参加者にもお茶を点ててみる?と、聞いてみると、皆、興味しんしん、やってみたい人が多かった。 アシスタントと店の人を含めると20数人分、ひととおり行き渡るのに時間がかかったが、とてもいい感じで喜んでいただけた。 予定の時間を大幅にオーバーしてしまったが、こんなわずかなことでも、お茶をいっしょにいただくと、皆が清々しい感じで帰っていったようだ。

また、いつものことだが、私の料理教室は材料にいとめをつけない。お茶もしかりで、昨日も一保堂のいい抹茶を使った。 はじめての人には特にいいグレートのお茶、おいしいお茶をお披露目するのに限る。

二十歳ちょっとの頃、お茶を習いはじめて、長いブランクがあったが、シアトルに来てお料理を教え始めて1年半後、 精神的貧血症になる感じがして(自分のもっているものを、すべて、人に与え、鮮血が失われて行くような感じ)、 裏千家の出張所の門戸をたたいたわけで、その後、1週間に一度、違うことを習うだけで、体中の細胞が生き生きしはじめ、 完全にこの精神的貧血症がなくなった。

以後、何年もいろいろな障害がありこそしたが、続けてこられたことも、そして茶懐石を勉強し、教え始めて足かけ7年というのも、 我ながらすごいと思う。20数年教えている西洋料理の方が実は私の専門。 懐石などは教えずに趣味にしていたほうがよかったと思うものの、ほかにだれも教えてくれないから、じゃあ、私が教えようと始めたのだが、 本当に物事をはじめると、どんどん深みにはまっていくものだ。

お茶によって生かされ、勉強心がわき、和をもっと知ることができ、生活がもっと楽しくなる、 そんな気がするので、また、とりわけ『在釜』を意識して、誰にでもお茶をいつでもふるまえる、そんな気持ちでいたい。

2008年2月




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