杉山洋子料理工房
 


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FOOD TALK

教室でお料理を教えたり、世界の「食」を求めて旅をしたり、 また日常生活の中から役に立つアイデア、新しい発見、感激など、「食」に関するエッセイをお届けします。



七尾一本杉通り

photo 七尾の昆布やさんの新しい金沢のお店で、昆布ずくめのお昼をなんともすてきな和の空間でごちそうになったことがある。 本店舗、新店舗、そのどちらの設計も担当された輪島の建築家、高木信二氏に紹介されたのだが、 以来、オリジナルの七尾のお店にも一度は行ってみたい、と思っていた。 昔ながらの一本杉通りの五人組にも会いたいしで、今回は、その希望がかなった。

金沢駅に到着するや、昆布やさんのご主人、白井さんに案内され、東山茶屋街のおそばのお昼をごちそうになる。 十割の田舎そばであるが、とても軽いかんじで、おいしい! そば好きにはこたえられない。 おみやげに越前釜のとっくりを一輪挿しにでも使ってくださいと、いただく。 また、毎回、白井さんご夫妻に案内されるのだが、店から歩いていける距離のあちこちに、まこと、気分のいいお茶の店、 コーヒーをサイフォンでつくってくれる居心地のいいカフェ、まるでヨットのハッチのしたにいるような、 スカイライトの快適なコーヒーやさんと古本屋さんを兼ねたところとか、学生時代ごっこをしている気分になる。

金沢から珠洲、輪島方面への道は、何回通っただろう。もう、ほとんどがなじみの景色である。 2時間ほどで七尾の店につく。奥様のお出迎えを受け、荷物を置いたら、さっそく一本杉通りの五人組のお店へ。 とっぱしは「ぬのやさん」という仏具屋さん。立派な仏壇を手間ひまかけて二階の工房でつくられている。 奥様から般若心経のミニチュア経をいただき、(写経大好きなので)、毎日のトートバッグに入れている。 汽車の中、車の中、暇なときに口ずさむほど、このお経、大好き。うれしいプレゼントです。

photo次はその横のお醤油屋さん、鳥居。昔ながらの手作りの醤油づくりで、今では貴重なお醤油やさん。道具、釜、抽出器、まるで、タイムスリップしたかのよう。 その二階はというと、飲み会、ジャズの会、そば打ち会、なんでもござれの空間。醤油のおけのふたを座卓がわりに置いてあるのも、また、 窓辺の生け花の台がとてもすてきと思ったら、そば打ち台。また、階下に来て、囲炉裏、炭とりなどをみる。 2007年12月号の『家庭画報』に載った「鍋」特集の撮影は、この囲炉裏でしたそうな。 炭を床下に貯蔵するというアイディアがとてもプラクティカル。

その次に行ったのが陶器やさん。昔ながらの毎日使いの食器。伊賀の長谷園の土鍋や、かまどさんなどがここでも陳列されていて、その普及度たるや大。 店構えは昔懐かしいが、もう少し土地のものや、ここならではのもの、或は、見たいものがあるとかの一工夫がほしいかな。

photoその次に寄ったのが町内会の会長さんのお茶やさん。そこで一目散に目に入ったのが、がらがらとひいてお茶葉をいれて抹茶の粉にする石臼。 ひかせてもらったら、なんととても軽い。ローマ時代からのヨーロッパの粉の文化でつかった石臼もパターンは、まったくいっしょだそうな。 『へえー!』とはじめてみせてもらったり、お茶をひいたりの経験に感激。そして今ひいたばかりの抹茶をつかってお薄をたて、御自服。 お菓子がまた素朴で、おいしいご当地の大豆飴。photo大豆の粉からできた練り菓子だ。 それに、ひきたての抹茶をちょいとかけていただく。めずらしいお菓子に、またその素朴なおいしさに、新しい発見。 このお菓子をつくっているお菓子やさんに、そのあと直行した。日持ちは2週間ほど、なるだけ新鮮なうちに食べたほうがよい、とのことだけれど、 アメリカに帰ってきてすぐの茶懐石のクラスに桜づくしにこのお菓子もあわせて紹介したら、皆にとてもよろこばれた。

五人組のひとり、和ろうそくやさんにはお目にかかれなかったが、ゆうざりの頃、一本杉通りのモダーンな石灯籠に灯がともされ、叙情的になったときにお店に行ってみた。 昔ながらのろうそくの様々、二階はミュージアムになっている。我が家のダイニングでは、ろうそくはもっぱらすすも匂いもしないビースワックスで作ったのを使っているが、 和のろうそく立ても持っているので、それに合わせたのを数本もとめて、満足。

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今晩は昆布やさんの二階で宴会だ。普段なら五人組が3品づつ持ち寄るポットラック。今日は4人、でも、数は12品も。 町内会の会長さんもいらして、白井さんのご主人の還暦お祝いに、はるばるアメリカから持参つかまつったブーブクリコの特上ロゼをあける。 活きのいいお刺身、お酢につけると、ぽっと赤くなる乙女なんとかのかぶ、今が旬の蛍イカ、大好きな煮しめ、かやくごはん、こちらの宴会では必ず出るという、 べろべろ等々が大きなテーブルいっぱいに並ぶ。みんなお袋の味。和の器がいい。

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そういえば、昔、同じ町のご近所の方が、所っちゅう井戸端会議のように、よく来てたっけ。そんな、日本の風習をなんだか懐かしく、 こういう心置きなくわいわい飲んで食べて日常の話に花咲かせている平和なひとときに、心がなごむ。

photo 昆布やさんの奥様とは、一年ほど前だったか、東北で待ち合わせて、秘境の湯、鶴の湯にいったことがあったが、金沢まで帰ってくる汽車の道中、 ひとしきり、昆布巻きのかんぴょう論議を聞かせていただいた。昆布やさんのにしん昆布は本当に最高の味。 今回はとろろ昆布をかいているところを見学させてもらったけれど、かえってきて、昆布うどんにこのおぼろ昆布を使うと、最高!  細かくひいたとろろ昆布をふわふわとおにぎりにまぶすと、とっておきの一品に変身。

この五人組が中心となって、町おこしをしている話も興味深い。
この地方では、お嫁にいくとき、実家が花嫁のれんをつくってもたせるという習慣があるそうな。 実際には使わないものだが、それらをゴールデンウイークにかけて、10日間ほど、各家々のを持ち寄って、昆布屋さんの二階で展示しているという。 実物は見たことがないが、町おこしのカタログを見てみると、まこと見事なものばかり。 こういう昔ながらの貴重な日本の味や、文化を伝えていってくれている皆様に、海外からエールを送りたい。

2008年3月




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