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教室でお料理を教えたり、世界の「食」を求めて旅をしたり、 また日常生活の中から役に立つアイデア、新しい発見、感激など、「食」に関するエッセイをお届けします。 茶懐石を教えるために年に2度ほど、食材を仕入れに日本へ帰る。まずは築地。懇意になって昆布のことならなんでも教えてくれる昆布専問店で、2〜3種類、特に懐石用にプロが使う、経済的で、味は同じというのを購入する。 これを教えてもらってから、もっぱら真昆布の元揃えを好んで使っている。このごろはフランス料理のかくし味にもさらっとしたあっさりめの味がでる種類もあって、 実際、使ってみるとまことに具合がよい。日高昆布もかかさない。 そして かつおぶし。赤身の入らない、上のかつおぶしを窒素ガスを充填したパックで買ってくる。もちろん、そば出し用には混合のじっくり色々な味がしっかり出るものを使うが。次は、海苔。佐賀のはしりを買う。日本へ発つ直前に手巻きすしパーティーをした。 前回買ってきたこの佐賀のはしりの半帖入り100枚の缶が、またたくまにすっからかん。口にいれると、歯ごたえよく、それとともにとろけるように噛める、 すばらしい海苔だ。2缶を買ったので、また次、日本に行くまでに、2度はパーティーができそうだ。それから胡麻豆腐用に、みがき胡麻と本くず、 ねり胡麻なども行きつけの店で買う。ベーシックの必需品がそろう。 京都の錦市場では、まっさきに行くのは有次で、何かまだ持っていなくて、役に立ちそうなもの、めずらしいもの、季節に合うものなどを物色。 今回は、茶懐石の一文字飯を桜のはなびらひとひらを盛り付けようと、旅の間にできあがってくる献立から、小さな物相型を選ぶ。
旅の最後、姉の誕生日は昼から家でシャンパンを開けてお祝いがはじまったが、その日のディナーに行ったのは、 神戸の「酒心館」だが(中央のテーブルに竹を花器にして、花を活けてあり、大すきな空間がある)、突き出しに出たのは、これで決まり! というアイディアをもらった、桜色の胡麻豆腐につくしのガーニッシュ。シアトルに帰ってきてさっそく、頭にあるのを試作してみて、一発で はんなり桜いろの世にも春らしい胡麻豆腐のできあがりだ。
八寸は、海のものは明石から持ち帰った本場の焼きあなごに、次の5月の椀は、ぜったいこれでいきたいとおもうヒントになる枝豆しんじょのかまぼこを余分に。
山のものは、パイクプレース・マーケットでこの季節、必ず商っている八百屋さんで見つけられるこごみは、ゆでて八方地で柔らく煮、京都は、 花背の美山山荘でいただいた蕗の薹をのせて、焼いた春らしいもの。ここで、千鳥の杯をかわすが、ダイニングテーブルでいただくので、さらに、杯をすすめると、いうところか。
ある日、彼女がようかんを作って茶室にもってきた。それを一口いただいた私は、これぞ日本の味と、身震いするほど感激した。 後で聞いた話だが、これはすべての材料を日本から持ち帰ったもので作ったという。どうりで。そして、その後、春の茶懐石のクラスには是非、教えにきてほしいと私が乞うたのは、当然のなりゆきといえよう。 アメリカには日本と同じ白あん作り用の豆がない。先に京都の末富さんがシアトルに和菓子を教えにきてくださったときに使ってらしたのと同じのを求めて、 美山荘のお昼のあと、タクシーを走らせて、三十三軒堂の南門まで買い出しにいった。缶入りで買え、その味は、すばらしいすぐれもの。
今日び、日本で茶会や茶事をするというと、みんなやれ辻留や、吉兆の料理にお菓子屋は、どこどこ製でと、注文でまかなってしまうことができる。 アメリカにいて、材料にも苦労をし、なにもかも手作り。そしてこんな、すばらしいことができる。果たして、本場の日本で、 こんなにしてもてなされる客はあるだろうか。こちらは幸せなかぎりである。ちょっとめずらしいものがはいっても、おおきな幸せで、 私達はそれらにフォーカスできる。日本では、あらゆるものがいつでも手に入るので、それがわからない。日本はリッチになって、貧しくなったともいえよう。 還暦のお祝いには、春の茶事をするといって先に逝ってしまった友人に、この桜の茶懐石をはなむけにしたいと思う。
2005年4月
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