杉山洋子料理工房
 


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FOOD TALK

教室でお料理を教えたり、世界の「食」を求めて旅をしたり、また日常生活の中から役に立つアイデア、新しい発見、感激など、「食」に関するエッセイをお届けします。



椿山

デン(書斎)の前の白いロードレンドロン(しゃくなげ、ワシントン州花)が、一雨ごと、暖かくなるにつれて咲き出しました。株によっては、まだつぼみのものも、はや満開になったものもあります。机に向かうたびに、目を楽しませてくれる花たち。キッチンの窓からは、赤い侘助がひとつ、ふたつと咲き出し、今は六つ、七つとグリーンの葉に映えてきれいです。

みなさんは、椿の花を召し上がったことがありますか? この3月、大阪に着くや、翌日、椿山に行こうと誘われました。何でも、椿の山を歩いて、そこですばらしいご馳走にありつけるといいます。IACP(International Association of Culinary Professionals)のメンバーであり、サマミッシュ(シアトルの郊外)で料理教室をしていて、年中、アメリカのみならず、日本や世界のあちこちで食べ歩く機会にめぐまれている食いしん坊の私に異議はありません。

さきほどまで町中のざわざわした通りを走っていたと思ったら、急に懐かしい田舎のような風景に早変わり。暖かい春の日差しを浴びて、田んぼやあぜ道が見えてくると、まもなく椿山のふもとの佐保の町です。この山の守主(オーナー)で、作務衣姿の岡田さんが私たちを出迎えてくれました。

さて、いよいよ椿山へ。下から見上げると、山が椿の赤、ピンクに霞んで見えます。山を少しずつ登って行きながら、様々な椿に侘助、また季節の花の木の説明を受けました。なんとこの山には、1,000種類もの椿が植えられているそうです。可憐な有楽、はんなりした曙、深紅のやぶ椿、薄いピンクの昭和侘助、椿らしい雪椿、珍しい幾重にも花弁のついた鹿児島、花弁と芯のコントラストの鮮やかな月光、そして交配によって生まれたという薄桃色の佐保の曙。椿だけでなく、万葉の草花までが山全体に植えられています。季節にさきがけて、かたくりの花も咲き出しています。約1時間ほど歩いて、山のあずまやでお昼のごちそうに。

大皿に盛りつけられた椿の天ぷらのほかに、糸うり(こちらでは、spaghetti squash)の酢の物、椿の花のあえもの、ずいき、しいたけなどの煮物、イモ類のてんぷら、杜葉にあつあつの赤米のご飯が末広に盛られています。そしてもちろん、自家製のおつけ物。お椀に何が入っていたか失念してしまいましたが、おすましだったと思います。すべて、この山と畑でとれた素材を使って、ご家族で作られた野菜料理。デザートにキウイと椿もち。そして、涙ぐみたい気持ちのにしたのが、手焼きのおかき。その素朴な見かけと、飛び上がらんばかりにおいしいおかき。こんなにほのぼのと、温かいお料理を食べさせていただいたこの感激。まして小鳥が来ては、ついばんで行くという椿の花のあえかな食感と食味。この春の一番の贈り物でした。

椿、野草、芋のてんぷら、
椿のあえもの、赤米ごはん
やぶ椿



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