杉山洋子料理工房
 


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FOOD TALK

教室でお料理を教えたり、世界の「食」を求めて旅をしたり、 また日常生活の中から役に立つアイデア、新しい発見、感激など、「食」に関するエッセイをお届けします。



水


10日か2週間に一度、リンウッドまで水を汲みにいく。
フレッドマイヤーで買った2ガロンのウオータータンク10個、1ガロンのを2個携えて。通い始めて、かれこれ2〜3年になる。
1000メートル以上、地下深くからの水だと思う。
真夏の暑い日に汲みたての水は、フッレッシュそのもので、冷やっとつめたい。これが日本の夏にあれば、最高だろうと思う。 その昔、井戸水を汲んで、スイカやトマトを冷やしたような。私は都会っ子なので、田舎の祖母の家で、夏休みにポンプを圧して汲んだり、 冬は水があたたかかったのを今でも懐かしく覚えている。神戸の家にも台所の板の間に井戸があって、 でも、もう蓋をして、家を建て替えたときには無用となっていた。今となれば、とても残念なことではないかと思ったりする。

もうかれこれ14年ほど前のことだが、プロバンスは、サンレミドプロバンスの友人の経営するお宿にいったとき、ここの水の良さに驚愕した。 2、3日すると、シャワーにはいっても髪がつやつやし出す。なんと地下950メートルほど掘ったという。 最初に水の層があって、まだもっと深く堀進んであてた水の層なのだそうだ。ミネラル分たっぷりのいい水。この水にひかれて、ここには8回も通った、 ということは平均すると、1年半ちょっとに一度の割で行っているということかな。プロバンスの土地、風物、食べ物、歴史といろいろ理由はあるだろうが、 ここの水、そしてオリーブから作った石けんに惹かれたといって間違いない。

ここでは、ディナーのテーブルで『お水はいかがなさいますか』っと聞かれると、この地方でも特別有名なワイン、 CHATEAU NEUF DE POPEをもじって『CHATEAU NEUF DE POMP、シルブプレ』(井戸から汲み上げた水を)なんてシャレて言ったりして、 みんなで大笑いする。要するにわざわざミネラルウオーターや、ガスいり(炭酸水)を注文しないだけのこと。

日本の能登にも私の行きつけのお宿には祠があって、そのお地蔵様の横にいつもこんこんと涌いでる泉がある。 芹がまわりに生えている。ここのお水がおいしく、いつもプロバンスを思い出させる。

ここシアトルでも、かれこれ36年も前、ワシントン大学に短期留学したことがあるが、そのとき、神戸の姉妹都市の関係で、 それより以前からの交換留学生の友人のお宅にホームステイさせてもらったのだったが、 そのお宅にはプールがあって、なんと『近くに涌きいでる泉があったので、プールを作ったのよ』、と言われるだけあって、 このプールで泳いだときの感銘は、形こそ四角いコンクリ−トとタイルでできたプールだが、目をつぶると、まさに森の奥の泉で泳いでいる、 ディズニーの世界だった。
須磨の海で、子供の時から泳いで育った根っから海大好きの海っ子だが、この清冽な泉のプールで初めて泳いだときには、心底、感銘を覚えた。

それにしても、いつか、エバレットからそんなに遠くないプライベートな島にミニマリズムを徹底した庵を建てようと夢見ているところだが (2年ほど前に、この島のロットを2軒分かったのだ)、この島には6つの井戸と、あとは、海水を浄化して真水にかえる装置があるのだが、 一晩不動産やさんの家に泊めてもらったときに入ったシャワーの水は、石けんをつかっても泡がたたない、まるで硬水。 キャビンが出来たあかつきには、行く度にリンウッドから水を汲んで、飲み水は持っていかないといけないなーと。 もちろんヨットに行く時も、この飲み水は、欠かせない。船用は1ガロン入りが最適。

水 我が家では、お湯をわかすときに鉄びんをつかう。東北は、盛岡の釜定の南部鉄でできた、とてもすっきりしたお気に入りの鉄びんである。とびっきりおいしい水とこの鉄びんで沸かすお湯をつかうと、 お茶がまるで違ったように、おいしくなる。昨年の春、何度も鉄びんを空焚きして、だめになっているのではないかと、 盛岡までわざわざ、釜定を探して、鉄びんを見てもらいにいった。開口一番、『とてもいいお水を使っていらっしゃいますね。今どき珍しいですよ』と。 鉄びんの注ぎ口から水の湯垢みたいなあとがついている。こういうのが鉄につくのは、ミネラルたっぷりのいいお水しかつかないと。 町の消毒液いっぱいはいった水では、そういう跡が残らないのだとか。もう一度、漆をかけてもらって、外は新品のようになった鉄びんだが、 また1年半たって、その湯垢がみえるようになった。

前々からこのお水のことは、いろいろな人達から聞いていたのだが、実際、このお水を汲める場所まで連れて行ってくださった お茶のクラスメートにいまも感謝でいっぱいだ。

2008年6月




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